2011年12月26日月曜日

江東区宛て要望書(竪川河川敷公園)

20111226

江東区長 山 崎 孝 明 殿


東京都新宿区四谷1-7日本写真会館4F
マザーシップ司法書士法人内
ホームレス総合相談ネットワーク
代 表 弁護士  森  川  文  人
東京都北区赤羽2-62-3      
担 当 司法書士 後  閑  一  博
電 話 03-3598-0444

要 望 書

要望の趣旨

1.    貴区は,江東区立竪川河川敷公園の一部(江東区亀戸一丁目27番地先,大島二丁目31番地先)において,そこの起居するホームレスの強制立ち退きを止めてください。
2.    どうしても強制立ち退きが必要な場合には,①ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法に基づき,当事者、関係者との実効的で十分な協議及び交渉し,適切かつ十分な代替措置を講じること,②民事保全法に基づき,債権者(江東区)に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とすることを疎明して管轄裁判所に対して仮処分の申立をすること,など少なくとも法律に定められた手続きを遵守してください。

要望の理由

1.    ホームレス総合相談ネットワーク(以下,「当ネットワーク」といいます。)は,ホームレスの方への法的支援を行う目的で平成15年に結成された団体であり,東京都と特別区が取り組んでいる緊急一時保護センターや自立支援センターでの法律相談や,路上でのホームレスの方への法律相談等を通してホームレスの方の自立への支援や人権の擁護に取り組んでおります。
2.    ところで,貴区は,江東区立竪川河川敷公園の一部(江東区亀戸一丁目27番地先,大島二丁目31番地先)において,そこに起居するホームレスに対して,①十分な話し合いもなく、②居宅保護の提供(生活保護法30条)等の適切な代替措置の提供もないまま,都市公園法を根拠として,住居である小屋の除却を命じていますが,この行為は,違法かつ不当であるので,以下のとおり警告します。
(1)  ホームレス自立支援法、社会権規約違反
2002年8月に成立したホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(以下「特措法」という。)11条は、公共施設の管理者は、「当該施設をホームレスが起居の場所とすることにより適正な利用が妨げられているときは、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、法令の規定に基づき、当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとるものとする」と定めています。そして、同法制定にあたっての衆議院厚生労働委員会の付帯決議は、上記11条の「必要な措置をとる場合においては、人権に関する国際約束の趣旨に十分に配慮すること」としています。
ここにいう「国際約束」とは、国際人権規約・社会権規約11条が定める強制立ち退きの禁止(占有の法的保障)を意味しています。
すなわち、わが国は、1979年に国際人権規約を批准しましたが、「適切な居住の権利」を保障する同社会権規約11条1項は、その内実として、①当事者、関係者との実効的で十分な協議及び交渉(適正手続の保障)と②適切かつ十分な代替措置を講じること(住居の提供等)なく強制的に立ち退かされないことを権利として保障しているものと解されているのです(占有の法的保障、強制立ち退きの禁止。社会権規約委員会、1997年の一般的意見7)。
(2)  民事保全法違反
仮に特措法上のホームレスの自立の支援等に関する施策との連携がなされていたとしても,小屋が撤去されてしまえば,対象者はそこに居住することはできないのであるから,代執行に先んじて立ち退きを求める仮処分の申立が必要不可欠です。
その場合,債務者(ホームレス)に対して立退きを命ずるような仮処分命令は、債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに限り、原則として口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経た上で、発することができるものとされています(民事保全法第23条第2項、第4項)。
このことは,国連の経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解(2001924日)」の以下の懸念に対して,
30.委員会は、強制立ち退き、とりわけ仮の住まいからのホームレスの強制立ち退き、及びウトロ地区において長い間住居を占有してきた人々の強制立ち退きに懸念を有する。この点に関し、委員会は、特に、仮処分命令発令手続においては、仮の立ち退き命令が、何ら理由を付すことなく、執行停止に服することもなく、発令されることとされており、このため、一般的性格を有する意見4及び7に確立された委員会のガイドラインに反して、あらゆる不服申し立ての権利は無意味なものとなり、事実上、仮の立ち退き命令が恒久的なものとなっていることから、このような略式の手続について懸念を有する。
政府は,0912月「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約第16条及び第17条に基づく第3回報告」において,
(パラグラフ57)民事保全法における仮処分命令手続においては、命令にはその理由を付さなければならないとされている(民事保全法第16条)。また、債務者に対して立退きを命ずるような仮処分命令は、債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに限り、原則として口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経た上で、発することができるものとされている(同法第23条第2項、第4項)。債務者は、仮処分命令に不服があれば、保全異議を裁判所に申し立てることができる(同法第26条)。裁判所は、この申立てに対して決定を行い、仮処分命令を取り消すときは、債務者の申立てにより、債権者に対し、原状回復を命ずることができる(同法第32条第1項、第33条)。債務者は、保全異議の申立てに対する裁判所の決定に不服があれば、保全抗告を裁判所に申し立てることができる(同法第41条第1項)。また、裁判所は、これらの債務者の保全異議や保全抗告の申立てに対する決定を行うまでの間、仮処分命令の執行停止を命ずることができる(同法第27条、第41条第4項)。さらに、仮処分命令は暫定的なものであり、最終的にはより厳格な手続である本案訴訟において、立退きの当否が裁判所によって判断されることになる。仮に、債権者が本案訴訟を提起しない場合には、裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出することを命じなければならず、債権者が同書面を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない(同法第37条第1項、第3項)。したがって、最終見解は、前提である法制度について、事実を誤認しているものである。 日本における仮処分命令発令手続を含む立退き命令については、一般的な性格を有する意見4及び7において委員会が明示したガイドラインに反するところはない。
と説明していることからも明らかな事実なので,仮処分の申立がなされていない本件除却命令はこれらの手続き違背が明確です。

以上の通り、貴区が今回行おうとしている締め出し行為は、上記法律及び人権規約に照らし違法であるので、速やかに中止するよう要望します。
以上

2011年12月22日木曜日

第2回年末年始「拡大」相談会の実施について

平成231222

報道関係者各位

主催:つながる総合相談ネットワーク東京
代表 宇都宮 健 児
共催:日本司法支援センター東京地方事務所(法テラス東京)
所長 永 盛 敦 郎
ホームレス総合相談ネットワーク
代表 森 川 文 人
東京災害支援ネット(とすねっと)
代表 森 川   清
後援首都圏生活保護支援法律家ネットワーク
代表 猪 股   正

連絡先 事務局 後閑一博 Tel 0335980444

      第2年末『拡大』相談会・取材・報道のお願い

私たちは,これまでホームレス状態にある方など貧困者層を中心に相談活動を常時実施していますが,2008年「年越し派遣村」,2009年「公設派遣村」を経験して,とりわけ年末年始の相談需要の高さを認識し,昨年,第1回年末「拡大」相談会を実施しましたところ,260件(面談164件,電話96件)の相談が殺到し,相変わらずの需要の高さを実感したところであります。
国や行政も,年末年始の特別な需要を強く認識し,09年は「公設派遣村」,10年は「住居・生活困窮者支援プロジェクト」を実施していましたが,本年は今のところ,特別な施策についての発表がありません。
そこで,再び福祉や法律の専門家を中心としたグループに声をかけ,市民団体,さまざまな分野の専門家,市民などいろいろな立場の人が協力して,相談会・ワンストップ総合相談窓口を開催することにしました。
また,本年は,東日本大震災・福島第1原発事故の影響で避難生活を余儀なくされた避難者への相談実績のある東京災害支援ネット(とすねっと)とも共催し,避難所や仮設住宅での生活の不足等に対する相談も併せて実施します。
少しでも多くの方が,生活の不安等を取り除けるよう取材・報道をよろしくお願い申し上げます。
相談会概要
●年末の『拡大』相談会の概要(面談)
日時
 1226日(月) 10001900
 1227日(火) 10001900
 1228日(火) 生活保護申請同行
場所
内容
 法律・生活・労働等の総合相談会

●電話相談
日時 1226日(月) 10001900
     1227日(火) 10001900
   1228日(水) 10001900
電話 0120-15-2756
内容 
 法律・生活・労働・女性等の総合電話相談会

●アウトリーチ活動
日時 1229日 
   1230日 
   1231
   0102
   0103
内容
 都内各地での,軽食・毛布・カイロ等の配布と法律・生活・労働等の総合相談

 寄付金口座 
東京三菱UFJ銀行  四谷支店
普通口座  口座番号:0092332
口座名義人:年末「拡大」相談会実行委員会 会計 司法書士 山本栄一


2011年11月25日金曜日

荒川河川敷質問書

20111125

国土交通省
大臣 前 田 武 志 殿
国土交通省関東地方整備局荒川下流河川事務所 
 所長 小 島   優 殿
国土交通省荒川下流河川事務所小名木川出張所
 所長 塩 谷   浩 殿
荒川区河川敷で野宿をする居住者有志
及び         
ホームレス総合相談ネットワーク
代 表 弁護士 森  川  文  人
東京都新宿区四谷1-7日本写真会館4F
マザーシップ司法書士法人内
                    担当 後  閑  一  博
 東京都北区赤羽2-62-3  
                       電 話 0335980444
FAX 0335980445
    

                                    質 問 書

 荒川河川敷で野宿をする居住者有志とホームレス総合相談ネットワークは,連名で以下の質問をしますので,国が措置の期限と定めた,平成23126日までに書面で回答くださいますようお願いします。

質問事項

1.    国は,荒川河川敷(堀切橋付近)において,平成231122日,国関整荒下管第61号をもって,「河川法第75条第1項の規定に基づく河川管理者の監督処分に係る措置を命じる者を確知することができないので,次のとおり措置することについて同条第3項の規定に基づき公告する。」と公告(以下「本件公告」)した(写真①)。
 河川法(以下「法」)第753項とは,「過失がなくて当該措置を命ずべき者を確知することができないとき」を要件とした,いわゆる「簡易代執行」を指すが,国は,その職員をして,本件公告に先立つ平成231118日,午前630分頃,対象工作物(以下「本件小屋」写真②)の所有者であり,そこに起居するいわゆるホームレス(以下「対象者」)に対して,本件対象の小屋周辺で工事を行うことを告知している。つまり,本件公告の前に対象者に接触しているのであるから,法第753項該当性がないことは明らかである。念のために申し添えるが,この小屋周辺で工事を行うことの告知をもって,本件小屋をフェンスで封鎖することの承諾を得たと主張しているようであるが,対象者は承諾などしていない。
 以上を踏まえて,本件公告は,法第75条第3項の手続き要件が充足してないため無効と認識するが,見解を示されたい。

2.    質問1に関連して,法第75条第3項の簡易代執行の要件は充足していないとしても,対象者に河川法上の違法があれば,行政代執行をすることができるが,本件小屋は対象者の住居である。
 ところで,国連,経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会は,2001924日「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解」として,国に対して,以下懸念を示した。
30.委員会は、強制立ち退き、とりわけ仮の住まいからのホームレスの強制立ち退き、及びウトロ地区において長い間住居を占有してきた人々の強制立ち退きに懸念を有する。この点に関し、委員会は、特に、仮処分命令発令手続においては、仮の立ち退き命令が、何ら理由を付すことなく、執行停止に服することもなく、発令されることとされており、このため、一般的性格を有する意見4及び7に確立された委員会のガイドラインに反して、あらゆる不服申し立ての権利は無意味なものとなり、事実上、仮の立ち退き命令が恒久的なものとなっていることから、このような略式の手続について懸念を有する。」
これに対して国は,0912月「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約第16条及び第17条に基づく第3回報告」において,以下報告した。
(パラグラフ57)民事保全法における仮処分命令手続においては、命令にはその理由を付さなければならないとされている(民事保全法第16条)。また、債務者に対して立退きを命ずるような仮処分命令は、債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに限り、原則として口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経た上で、発することができるものとされている(同法第23条第2項、第4項)。債務者は、仮処分命令に不服があれば、保全異議を裁判所に申し立てることができる(同法第26条)。裁判所は、この申立てに対して決定を行い、仮処分命令を取り消すときは、債務者の申立てにより、債権者に対し、原状回復を命ずることができる(同法第32条第1項、第33条)。債務者は、保全異議の申立てに対する裁判所の決定に不服があれば、保全抗告を裁判所に申し立てることができる(同法第41条第1項)。また、裁判所は、これらの債務者の保全異議や保全抗告の申立てに対する決定を行うまでの間、仮処分命令の執行停止を命ずることができる(同法第27条、第41条第4項)。さらに、仮処分命令は暫定的なものであり、最終的にはより厳格な手続である本案訴訟において、立退きの当否が裁判所によって判断されることになる。仮に、債権者が本案訴訟を提起しない場合には、裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出することを命じなければならず、債権者が同書面を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない(同法第37条第1項、第3項)。したがって、最終見解は、前提である法制度について、事実を誤認しているものである。 日本における仮処分命令発令手続を含む立退き命令については、一般的な性格を有する意見4及び7において委員会が明示したガイドラインに反するところはない。
上記より,行政代執行手続きが遵守されたとしても,小屋が撤去されてしまえば,対象者はそこに居住することはできないのであるから,代執行に先んじて立ち退きを求める仮処分の申立が必要と認識するが,見解を示されたい。

3.    国は,本件小屋をフェンスで封鎖し,立ち入るための通路に24時間態勢で監視員を配置している(写真③)が,その目的を示されたい。

4.    国は,平成231115日,本件公告の対象でなく,現にホームレスが居住しない6軒の小屋(以下「非居住の小屋」)を重機で破壊しているが,その法的根拠を示されたい。
 次に,仄聞するに,工事対象となる荒川河川敷に居住するホームレスが所有する工作物を,①ホームレスが居住する小屋,②非居住の小屋,と大分類し,内,②非居住の小屋について,ⅰ小屋の撤去に同意書を得ている,ⅱ小屋の撤去に同意書はないが承諾を得ている,ⅲ小屋の撤去に反対されている,ⅳ工作物所有者を確知することができない,を小分類し,②.ⅰ.ⅱ.ⅳに限り,強行したということであるが,②のⅰ.ⅱ.ⅳの対象の内訳を示されたい。
 さらに,上記②.ⅳに分類される対象者がいると認識しているが,この者の工作物の撤去について,法第75条第3項の簡易代執行を実施したか否か,したとすると,同5項の保管場所及び公示の方法を示されたい。

5.    国は,工事対象区域内に,質問3で①で区分したホームレスが多数いることを承知していると認識しているが,対象者の人数を示されたい。
 次に,ホームレス自立支援等に関する特別措置法(以下「特措法」)第11条は,「ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、法令の規定に基づき、当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとるものとする。」とあるが,支援等に関する施策との連携の有無,その内容を示されたい。
 仮に,上記が東京都のホームレス自立支援施策との連携であるならば,都の自立支援システムは稼働能力を前提とする施策であるので,上記人数のほか,年齢,傷病の有無等稼働能力の存在を示されたい。
                                                        以上

写真①

写真②
写真③

2011年11月12日土曜日

判例骨子

控訴をしないことの要請書(テキスト)

FAXに加えて、 メール要請もお願いします。

新宿区
160-8484 新宿区歌舞伎町1-4-1
新宿区区長室広聴担当課広聴係
FAX 03-5272-5500
https://www.faq.city.shinjuku.lg.jp/faq/EokpControl?&event=DE0001&cid=58177

厚生労働省
https://www-secure.mhlw.go.jp/getmail/getmail.html

東京都
東京都福祉保健局生活福祉部保護課
S0000226@section.metro.tokyo.jp

東京都生活文化局広報広聴部都民の声課
koe@metro.tokyo.jp
S0000010@section.metro.tokyo.jp
https://cgi.metro.tokyo.jp/cgibin/cgi-bin/fmail_input_disp.cgi?dep_id=ts02&scr_id=f001&lang_opt=00

東京都福祉保健局総務部総務課広報担当
S0000190@section.metro.tokyo.jp


新宿七夕訴訟東京地裁判決に対し控訴しないことを求める要請書

新宿区長 中山弘子 殿(FAX:03-5272-5500 区長室広聴担当課広聴係)
新宿区福祉事務所長 殿(FAX:03-3209-0278 福祉部生活福祉課自立支援係)

本年11月8日、東京地方裁判所民事第2部(川神裕裁判長)は、平成20年(行ウ)第415号生活保護開始申請却下処分取消等請求事件(原告:Y氏、被告:新宿区。「新宿七夕訴訟」)について、原告の請求を全面的に認め、被告である新宿区に対し、平成20年6月2日付で新宿区福祉事務所長がなした生活保護開始申請却下処分の取消し及び、同日から居宅保護の方法により生活保護を開始せよという生活保護開始決定の義務付けを命じる判決を言い渡しました。
本件は、ホームレス状態にあった原告が、アパートに住んで住居を確保した上で就職活動をしたいと考え、新宿区福祉事務所に生活保護を申請したところ、新宿区福祉事務所の職員から自立支援システムを利用するよう強く求められ、原告がこれを断ったところ、「稼働能力を十分活用しているとは判断できない」として、3度にわたり生活保護申請を却下したことに対し、最初の却下処分の取消と生活保護開始決定の義務付けを求めるものでした。
判決は、原告の主張をほぼ全面的に認め、法は不可能を強いるものではないこと、生活保護法4条1項は「当該生活困窮者が、その具体的な稼働能力を前提として、それを活用する意思を有しているときには、当該生活困窮者の具体的な環境の下において、その意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができると認めることができない限り」なお稼働能力活用の要件は満たされるとし、原告が稼働能力を活用していたことを認定しました。
このような判断は、生活保護法の本来の理念、現在の雇用をめぐる情勢や原告の年齢、経歴、置かれた状況に照らしてみても至極自然なものであり、被告である新宿区の福祉行政の過ちを断罪したものです。
原告は、自らの生活状況が不安定で非常につらく苦しい中でも、自らのたたかいが自分だけではなく自分と同じようにホームレス状態に陥った方々のためのたたかいと位置づけて、3年にもわたる裁判闘争に耐えてきました。
今回の判決で原告に対する取り扱いが生活保護法に照らして違法なものであると明確に判断された以上、行政の立場にある者としては、誤った行政行為を自らの責任で正す義務があります。
被告である新宿区が控訴をすることは、原告をさらなる裁判闘争にさらすことになり原告の精神的負担を増すばかりか、かつての原告と同様の境遇にあるホームレス状態にある方々をさらに苦境に追い込むものであり、到底容認できるものではありません。
以上の次第ですので、被告新宿区が判決を真摯に受け止め、控訴することなく、直ちに原告への生活保護の開始決定をして所定の金額を支払うことを求めます。そして、今後は、生活困窮者、特にホームレス状態にある者に寄り添った福祉行政をすすめていくよう改めることを求めます。
【意見欄(補足でご意見があればお書きください。)】








名前_____________________

住所_____________________
住所無しでもかまいません。
   
記入日  2011年  月  日 

【文責】 新宿区ホームレス生活保護裁判弁護団事務局長 弁護士 戸舘圭之
〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-42-4代々木総合法律事務所
TEL 03-3379-5211 FAX 03-3379-2840

控訴をしないことの要請書


2011年10月31日月曜日

国土交通省宛要望書

20111031

国土交通省
大臣 前 田 武 志 殿
国土交通省関東地方整備局荒川下流河川事務所 
 所長 小 島   優 殿
国土交通省荒川下流河川事務所小名木川出張所
 所長 塩 谷   浩 殿

東京都新宿区四谷1-7日本写真会館4F
マザーシップ司法書士法人内
ホームレス総合相談ネットワーク
代 表 弁護士 森  川  文  人
                    東京都北区赤羽2-62-3      
                    担当司法書士 後  閑  一  博
                       電 話 03-3598-0444
    

要 望 書

 要望の趣旨

1.   国は,荒川河川敷(堀切橋付近)において,そこの起居するホームレスの強制立ち退きを止めてください。
2.   どうしても強制立ち退きが必要な場合には,①ホームレスに対しては,ア「当事者、関係者との実効的で十分な協議及び交渉(適正手続の保障)」とイ「適切かつ十分な代替措置を講じること(住居の提供等)」,及び「債権者(国)に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とする」ことを疎明して管轄裁判所の決定を得て,②小屋等の物件に対しては,相当履行期間を定め,代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知するなど,ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法・民事保全法・行政代執行法等の法を遵守してください。


要望の理由

1.    当ホームレス総合相談ネットワークは,ホームレスの方への法的支援を行う目的で平成15年に結成された団体であり,東京都と特別区が取り組んでいる緊急一時保護センターや自立支援センターでの法律相談や路上でのホームレスの方への法律相談等を通してホームレスの方の自立への支援や人権の擁護に取り組んでおります。
2.    ところで,国は,荒川河川敷(堀切橋付近)において,工事を名目として,そこに起居するホームレスに対して,①十分な話し合いもなく、②居宅保護の提供(生活保護法30条)等の適切な代替措置の提供もなく,強制立ち退きを行っているとのことであり,この行為は,不当かつ違法であるので,以下のとおり警告します。
(1) ホームレス自立支援法、社会権規約違反
2002年8月に成立した「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」11条は、公共施設の管理者は、「当該施設をホームレスが起居の場所とすることにより適正な利用が妨げられているときは、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、法令の規定に基づき、当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとるものとする」と定めています。そして、同法制定にあたっての衆議院厚生労働委員会の付帯決議は、上記11条の「必要な措置をとる場合においては、人権に関する国際約束の趣旨に十分に配慮すること」としています。
ここにいう「国際約束」とは、国際人権規約・社会権規約11条が定める強制立ち退きの禁止(占有の法的保障)を意味しています。
すなわち、わが国は、1979年に国際人権規約を批准しましたが、「適切な居住の権利」を保障する同社会権規約11条1項は、その内実として、①当事者、関係者との実効的で十分な協議及び交渉(適正手続の保障)と②適切かつ十分な代替措置を講じること(住居の提供等)なく強制的に立ち退かされないことを権利として保障しているものと解されているのです(占有の法的保障、強制立ち退きの禁止。社会権規約委員会、1997年の一般的意見7)。
(2) 民事保全法違反
 債務者(ホームレス)に対して立退きを命ずるような仮処分命令は、債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに限り、原則として口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経た上で、発することができるものとされています(同法第23条第2項、第4項)。
 このことは,国連の経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解(2001924日)」の以下の懸念に対して,
30.委員会は、強制立ち退き、とりわけ仮の住まいからのホームレスの強制立ち退き、及びウトロ地区において長い間住居を占有してきた人々の強制立ち退きに懸念を有する。この点に関し、委員会は、特に、仮処分命令発令手続においては、仮の立ち退き命令が、何ら理由を付すことなく、執行停止に服することもなく、発令されることとされており、このため、一般的性格を有する意見4及び7に確立された委員会のガイドラインに反して、あらゆる不服申し立ての権利は無意味なものとなり、事実上、仮の立ち退き命令が恒久的なものとなっていることから、このような略式の手続について懸念を有する。
 政府は,0912月「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約第16条及び第17条に基づく第3回報告」において,
(パラグラフ57)民事保全法における仮処分命令手続においては、命令にはその理由を付さなければならないとされている(民事保全法第16条)。また、債務者に対して立退きを命ずるような仮処分命令は、債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに限り、原則として口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経た上で、発することができるものとされている(同法第23条第2項、第4項)。債務者は、仮処分命令に不服があれば、保全異議を裁判所に申し立てることができる(同法第26条)。裁判所は、この申立てに対して決定を行い、仮処分命令を取り消すときは、債務者の申立てにより、債権者に対し、原状回復を命ずることができる(同法第32条第1項、第33条)。債務者は、保全異議の申立てに対する裁判所の決定に不服があれば、保全抗告を裁判所に申し立てることができる(同法第41条第1項)。また、裁判所は、これらの債務者の保全異議や保全抗告の申立てに対する決定を行うまでの間、仮処分命令の執行停止を命ずることができる(同法第27条、第41条第4項)。さらに、仮処分命令は暫定的なものであり、最終的にはより厳格な手続である本案訴訟において、立退きの当否が裁判所によって判断されることになる。仮に、債権者が本案訴訟を提起しない場合には、裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出することを命じなければならず、債権者が同書面を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない(同法第37条第1項、第3項)。したがって、最終見解は、前提である法制度について、事実を誤認しているものである。 日本における仮処分命令発令手続を含む立退き命令については、一般的な性格を有する意見4及び7において委員会が明示したガイドラインに反するところはない。
と説明していることからも,必要手続きであることは争いようのない事実であります。
(3) 行政代執行法違反
 行政代執行法は,小屋等の除却など,法律に基き行政庁により命ぜられた行為について義務者がこれを履行しない場合であって,他の手段によつてその履行を確保することが困難であり,且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときに限り,厳格な手続きの下,小屋等の撤去を強行することができると法定されています。かかる手続きを経ることなく行われる小屋等の撤去は違法です。
3.    以上より,上記工事名目の締め出しは,そこに起居するホームレスの人々を強制的に立ち退かせようとするものあり,その前提として、当事者及びその支援者らと十分に話し合いを行い、敷金支給によって居宅を確保した上での居宅保護の開始(生活保護法30条、2003年7月31日付厚生労働省社会・援護局保護課長通知「ホームレスに対する生活保護の適用について」,同日付厚生労働省社会・援護局長通知「『生活保護法による保護の実施要領について』の一部改正について」)をはじめとする適切な代替措置を講じなければなりません。
 貴庁が、十分な話し合いも適切な代替措置も講じることなく行おうとする本件排除は、自立支援法,民事保全法,行政代執行法等法令に抵触することは明らかであり,要望の趣旨記載のとおり法律の遵守を強く要望します。
4.   そもそも,支援者の質問に対して,貴庁職員は,以下のとおり回答するなど,ホームレスの排除を目的とした工事であることを認めているなど,その悪性は看過しがたいものです。
■工事の目的について
・10年以上に渡って、地域住民から要望があがっている。
・あれだけ(小屋が)密集していると、周りの住民は入っていけない。
・ホームレスが危険だ、怖いという(住民の)声を聴いている。
・ゴミなどがちらかっているのも、不快に思われている。
■退去通告と排除の正当化について
・公有地である以上、勝手に家は建てられない。退去を求めるのは当然。
・もし、これを許容したら、河川敷中、家だらけになってしまう。家だらけになる前に、出てってくださいということです。
・みんなの土地に勝手に家を建てるのは法律上問題。
・住むのであれば、堤防の内側で、洪水の危険がなく、野宿ではなく、所有権を持って住める場所に住んで下さい。
 
  以上の通り、貴庁が今回行おうとしている締め出し行為は、上記法律及び人権規約に照らし違法であるので、速やかに中止するよう要望します。
以上
  

2011年10月28日金曜日

「北東アジアにおける普遍的・定期的レビュー (UPR)勧告のフォローアップに関する市民社会フォーラム」レポート

URP勧告のフォローアップに関する市民社会フォーラム

経済的・社会的権利


発表者 後閑一博
活 動 
A)     032月ホームレスの方の法的支援を目的とした団体であるホームレス総合相談ネットワークを設立
B)     113月被災者・被害者の方の支援を目的とした団体である東京災害支援ネット(とすねっと)を設立

A)の活動に関連して
経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会は,「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解(2001924日)」において,次の懸念を示した。
29.  29.委員会は、全国に、特に大阪の釜ヶ崎地区に、多数のホームレスの人々がいることに懸念を有する。委員会は、締約国がホームレスを解消するための包括的な計画を策定していないことにさらに懸念を有する。
    30.委員会は、強制立ち退き、とりわけ仮の住まいからのホームレスの強制立ち退き、及びウトロ地区において長い間住居を占有してきた人々の強制立ち退きに懸念を有する。この点に関し、委員会は、特に、仮処分命令発令手続においては、仮の立ち退き命令が、何ら理由を付すことなく、執行停止に服することもなく、発令されることとされており、このため、一般的性格を有する意見4及び7に確立された委員会のガイドラインに反して、あらゆる不服申し立ての権利は無意味なものとなり、事実上、仮の立ち退き命令が恒久的なものとなっていることから、このような略式の手続について懸念を有する。
経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会は,「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解(2001924日)」において,次の提言及び勧告を行った
 56. 56.委員会は、締約国が自ら、そして都道府県と共同で、日本におけるホームレスの範囲及び原因を判定する調査を実施することを要求する。また、締約国は、ホームレスの人々の相当な生活水準を確保すべく、生活保護法のような既存の法律を十分に適用することを確保するために適切な措置をとるべきである。
    57.委員会は、締約国があらゆる立ち退き命令、とりわけ仮処分命令発令手続が、一般的な性格を有する意見4及び7において委員会が明示したガイドラインに従うことを確保するために救済的な行動をとることを勧告する。
これに対して,日本国は,0912月「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約第16条及び第17条に基づく第3回報告を行った。
(パラグラフ56)日本におけるホームレスの実態に関する調査については、2002年に成立した「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(以下「法」という)の規定に基づき、地方公共団体の協力を得て、2003年及び2007年に全国調査を実施し、ホームレスの起居している場所やホームレスになった原因等の把握を行ったところである。 また、法及び2007年の全国調査結果を踏まえ2008年に見直しを行った「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」に基づき、ホームレスの自立を支援するために、雇用、住宅、保健医療、福祉等の各分野にわたって施策を総合的に推進しているところである。
(パラグラフ57)民事保全法における仮処分命令手続においては、命令にはその理由を付さなければならないとされている(民事保全法第16条)。また、債務者に対して立退きを命ずるような仮処分命令は、債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに限り、原則として口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経た上で、発することができるものとされている(同法第23条第2項、第4項)。債務者は、仮処分命令に不服があれば、保全異議を裁判所に申し立てることができる(同法第26条)。裁判所は、この申立てに対して決定を行い、仮処分命令を取り消すときは、債務者の申立てにより、債権者に対し、原状回復を命ずることができる(同法第32条第1項、第33条)。債務者は、保全異議の申立てに対する裁判所の決定に不服があれば、保全抗告を裁判所に申し立てることができる(同法第41条第1項)。また、裁判所は、これらの債務者の保全異議や保全抗告の申立てに対する決定を行うまでの間、仮処分命令の執行停止を命ずることができる(同法第27条、第41条第4項)。さらに、仮処分命令は暫定的なものであり、最終的にはより厳格な手続である本案訴訟において、立退きの当否が裁判所によって判断されることになる。仮に、債権者が本案訴訟を提起しない場合には、裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出することを命じなければならず、債権者が同書面を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない(同法第37条第1項、第3項)。したがって、最終見解は、前提である法制度について、事実を誤認しているものである。 日本における仮処分命令発令手続を含む立退き命令については、一般的な性格を有する意見4及び7において委員会が明示したガイドラインに反するところはない。
 しかし,以下のとおり政府報告は正確ではない。
1.      04年「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」が制定されたのは事実であるが,ここでいうホームレスとは,「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者をいう」だけを指し,経済的理由で安定した住居を失い,ネットカフェ・マンガ喫茶などに寝泊まりする者(なかには終日営業のマクドナルドで着席し眠る者もいる。)は含まれていない。
2.      0307年全国調査を実施したのは事実であるが,その方法は「全市区町村における巡回による目視調査」であり,東京都など大都市では昼間の目視調査であり実数や実態の正確に反映しているとは言えない。
3.      0807月「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」が策定されたのは事実であるが,施策の柱は自立支援センター等による収容施設により実施されており,「その給付の水準も,生活水準や住環境などの点で生活保護制度によるそれとは相当な隔たりがある。」を踏まえて,生活保護と別制度であることを認めている。勧告の「生活保護法のような既存の法律を十分に適用することを確保するために適切な措置をとるべきである」は,既存の法律である「生活保護」の適用の回避のために使われている。
 なお,自立支援センターの処遇は6人から12人の相部屋であり,夜間労働する者とそうでない者が同じ居室の2段ベッドの上下に寝泊まりをしなければならないなど睡眠に対する配慮すら行われていない。
4.      仮に生活保護となる場合も,ホームレスであった者に対しては,収容保護の徹底が図られている。多くの福祉事務所では,自立支援センターよりも劣悪な無料低額宿泊所という施設に入居しなければ,保護を受けられないとする運用を行っている。          
5.      パラグラフ57に対して,国は長々と一般の民事保全法の解釈について報告をしているが,懸念が「仮の住まいからのホームレスの強制立ち退き」とあるので,民事保全法による仮処分を指しているのではなく,行政代執行を指しているのは明白である。
6.      そもそも,ほとんどの強制排除では,その行政代執行法も使われることなく,昼間仕事をしていたら小屋が撤去されていたという報告は多数寄せられている。
7.      大規模に撤去する場合に限り,行政代執行をすることがある。最近では,20101025日,渋谷駅近くの宮下公園で強行されたが,行政代執行前の915日には,公園内にいるホームレスを排除しフェンスで封鎖している。
8.      行政代執行法よる命令は,公園内の物件の除却であったが,915日には,ホームレス(人間)を多人数の職員・警備員等により実力を用いて,暴力的な排除が行われた。
9.      ところで,「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」制定にあたっての衆議院厚生労働委員会の付帯決議は、同法11条「当該施設をホームレスが起居の場所とすることにより適正な利用が妨げられているときは、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、法令の規定に基づき、当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとるものとする」について,「必要な措置をとる場合においては、人権に関する国際約束の趣旨に十分に配慮すること」つまり,国際人権規約・社会権規約11条1項、①当事者、関係者との実効的で十分な協議及び交渉(適正手続の保障)と②適切かつ十分な代替措置を講じること(住居の提供等)が履行されなければならない。しかし,宮下公園では①協議交渉の機会はなく,②代替措置として提供された住居は,通称鶏小屋と称される鉄線で作られた住居でしかなかった。
         
B)の活動に関連して
経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会は,「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解(2001924日)」において,次の懸念を示した。
22.委員会は、報告された原子力発電所事故、及び当該施設の安全性に関する必要な情報の透明性及び公開が欠如していることに懸念を有するとともに、原子力事故の予防及び処理のための、全国規模及び地域社会での事前の備えが欠如していることに懸念を有する。
27.委員会は、阪神・淡路大震災後に兵庫県により計画し実行された、大規模な再定住計画にもかかわらず、最も震災の影響を被った人々が必ずしも十分に協議を受けず、その結果、多くの独居老人が、個人的注意がほとんどあるいは全く払われることなく、全く慣れない環境に起居していることに懸念を有する。家族を失った人々への精神医学的又は心理学的な治療がほとんどあるいは全くされていないようである。多くの再定住した60歳を越える被災者には、地域センターがなく、保健所や外来看護施設へのアクセスを有していない。
28.委員会は、阪神・淡路地域の被災者のうち、貧困層にとっては、自らの住宅再建資金の調達がますます困難になっていることに懸念をもって留意する。これらの者の中には、残余の住宅ローンの支払いのために、住宅を再建し得ないまま財産の売却を余儀なくされた人々もいる。
経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会は,「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会の最終見解(2001924日)」において,次の提言及び勧告を行った
49.委員会は、原子力施設の安全性に関連する問題に関し、周辺住民に対して、全ての必要な情報の透明性及び公開性を促進することを勧告する。さらに、締約国に対し、原子力事故の予防及び事故が起きた際の迅速な対応のための準備計画を策定することを要求する。
55.委員会は、貧しい被災者が、住宅ローンの支払いを続けるために財産を売却せざるを得なくなることを防ぐために、それらの者が破壊された住宅を再建するために公的住宅基金あるいは銀行に対する債務の支払いを支援するため、締約国が規約第11条の義務に従って、効果的な措置を迅速にとることを勧告する。
これに対して,日本国は,0912月「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約第16条及び第17条に基づく第3回報告を行った。
(パラグラフ49
(情報の透明性、安全性)
原子力の安全に対する国民や立地地域の住民の皆様の理解を得るためには、原子力安全規制に関し、十分な説明を行い、御意見を伺うことが重要と認識している。原子力安全に関する情報については、これまでもさまざまな機会や媒体を通じて適切に公開している。
経済産業省原子力安全・保安院においては、主要立地地域に原子力安全地域広報官を配置して体制を整え、原子力の安全規制に関し、原子力立地地域の自治体、地元議会、住民に説明するとともに、パンフレットの作成・配布等を積極的に行うなど、情報公開の体制強化を図っており、今後とも、原子力安全規制に対する国民からの理解の増進に最大限の努力をするとともに、事業者に対しては、安全に係る情報公開や対外説明をしっかり行うよう指導したいと考えている。
(準備計画)
我が国の防災に関する基本的な法律である災害対策基本法に基づく防災基本計画には、原子力災害対策編が設けられており、原子力災害対策の基本として、原子力災害の発生及び拡大を防止し、原子力災害の復旧を図るために必要な対策について定めている。防災基本計画に基づき、関係省庁は防災業務計画、都道府県・市町村は地域防災計画を策定し、関係省庁の所掌事務や当該都道府県・市町村の区域に関するより具体的な対策を定めている。
原子力災害対策特別措置法に基づき、原子力事業者は、原子力事業所毎に原子力事業者防災業務計画を策定し、原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策等に関し定めている。
(パラグラフ55
住宅金融支援機構は、災害復興住宅融資として、災害により滅失・損傷した家屋の復旧に必要な住宅金融支援機構は、災害復興住宅融資として、災害により滅失・損傷した家屋の復旧に必要な資金を長期固定金利で貸し付ける融資を行っている。
 しかし,以下のとおり政府報告は正確ではない。
1.   パラグラフ49について,事故が発生しても,情報が公開されず,むしろ隠蔽されたのは各種報告のとおりである。
2.   原子力災害の発生及び拡大を防止し、原子力災害の復旧を図るために必要な対策について定めている。というが,避難に対する救助は,災害救助法によるところとされ,災害救助法は長期避難について,十分な措置が執られていない。
3.   パラグラフ55について,「貧困層にとっては、自らの住宅再建資金の調達がますます困難になっていることに懸念をもって留意する」と懸念を示しているに対して,単に低利融資の実施を報告している。避難が長期化するなか,とりわけ住宅の確保に十分な施策が準備されていない。
4.   被災・被害後一時的な保護を目的とする避難所は,体育館や公民館などに本来7日を目処に救助する緊急避難的施設であるが,双葉郡双葉町だけでも747人(1021日現在)騎西高校に避難しているなど未だ存続している。         
5.   同じ,避難所でも,旅館・ホテル等も利用されているが,狭小であり長期に生活できる場所ではない。仮設住宅としての,公営住宅等も提供されているが,仮設住宅では炊き出し(食事の提供)が受けられないため,多くの方が仮設住宅に移らず,未だ避難所たる旅館・ホテルでの生活を余儀なくされている。
6.   住宅金融支援機構が低利融資をしているというが,被災・被害にあった住宅のローンはそのまま支払い続けなければならない。いわゆる2重ローンの問題として生活をより困窮させているが,2重ローン解消についての施策は講じられていない。

A)B)に関連して,
 日本は,民法により「住生活の本拠をその者の住所とする」と住所を定義し,住民基本台帳法により,国民に住所の登録を義務づけ,選挙権や様々な行政サービスを提供するための基礎情報としている。
一方,生活の本拠としての実体があったとしても,「角材やブルーシートを組み合わせた簡易な構造。容易に撤去が可能で土地に定着していない。」などの小屋などでは,「形態が社会通念に基礎付けられていない。」として住民登録ができない。
したがって,ホームレスである者は選挙権の行使も行政サービスも受けられない。この外,様々な事情で住民登録をしていない者も多数いるが,行政サービスから除外される。のみならず,東日本大震災では,住民票がなかったために,義援金や東京電力からの賠償金が受け取れないなど報告されている。
選挙権は,民主主義国家の根幹である。にも関わらず指摘を受けてもなお何らの措置を講じることなく2010711日参議院選挙は強行された。